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ハイル

~ オルチャン少女の物語 ~

「ぉぼぇτる?ゎたU達 カゞ一緒に歌っナ二 ぁの曲を?」

雪風が激しく吹き荒れる雪原。いつからかここに存在するものは全て凍ってしまった。生命体の痕跡すら見られなくなった孤独な地。
その時、遥か遠くから歌声が聞こえてきた。

なぜ言わなかったの
いや 言えなかったの

「…この歌は?」

少しも私のことを考えてくれなかったの

「このメロディー…この歌詞…」

記憶の片隅に追いやり完全に忘れていた歌が思い出された。

好きなんでしょ 愛してるんでしょ

「待って…ここからが私の好きなパートだわ…!」

歌の一小節に忘れていた多くの思い出がとめどなく溢れ出てきた。

こうして終わらせるなら
なぜあんなことを言ったの!

その時だった。ガシャンという音で私は目を覚ました。

「あなたを憎めばいいの それとも自分のせいにすればいいの~」

これ以上、聞くだけでは満足できなかった私は歌った。体が記憶するサビが始まると全ての感覚と感情がよみがえった。
しかし…こみ上げてきた感情を落ち着かせてみると、見えるもの全てが凍りついている。

「これは何?ここはどこ?」

周りには私以外誰もいなかった。みんなどこに行ったの…?

***

「ミリオレ歌謡祭に行く途中だったんだけど…、ここは何なの?」

一体何が起きたのかしら。
状況把握もしなきゃだけど、まずはたまっている書き込みを見るためにサイワールドを開いた。やっぱりたくさんの書き込みがある。みんなのページも見に行かないと。さぁ、まずは一番多くのコメントを残してくれた『本当のオルチャン美女』さんから。新しいスキンかな?可愛いな…アバターも私のタイプだ。ポイントがあれば買わないと。チャージ残ってるかな?

次は『君は僕だけのビタミン』さん。お、BGM変えてる。私のと同じだ。ムカつく…。他の人のページを閲覧するのに夢中になっていた時。たまっていたメッセージを確認し終わると、上段にある案内が目に入った。

[サイワールド!2022年4月2日サイデイ再オープン!]

2022年…? 今は2000年じゃなくて2022年ってこと?!

***

雪に覆われた雪原では全てのものが止まっている。
どうも、私はハイル。私は2000年から止まっている冷凍人間だ。どこから聞こえてきたのか分からない歌が私を起こしたけど、生きているのは私だけだと思う。いくら見回しても吹雪だけで、東西南北どの方向に歩いていっても同じ風景だ。

「本当にヤバい。私以外誰もいないの!?」

鳥の鳴き声さえも聞こえない場所。いくら叫んでも聞こえてくる返事はなく、自分の声だけが響き渡る。荒れ果てた雪原。世界が終わってしまったような気がすると、私が心の奥底で望んでいたものが浮かんだ。
青少年ベスト選抜大会に出ないといけなかったのに…。私が出たら絶対に歌で一番になれた…。準備できてなくても出ればよかった。こうして時間が経ってしまうと分かっていたら、やってたのに。

世の中に聞かせられなかった私の歌をそのまま葬るには残念で、思い切り歌ってみる。誰かは私の歌を聴いて喜んでくれるかもしれない…。

「聞いてるの?聞いてるなら、頷いて!」

普通こうして歌っていると、誰かがこっそり聞いている展開かもしれないと思い叫んでみる。しかし、静かな静寂は続き、もうこの歌を誰とも分かち合えないことがはっきりしてきた。もう終わりなの?サイトからダウンロードして繰り返し聴いていた数々の曲。もうこれを一緒に歌う人がいない?

その瞬間、私を目覚めさせた、あの歌を思い出した。急に聞こえてきたあの歌声の主人公は誰だったの!?つまりここには私以外にも誰かがいるってことでしょ?私は遠くの白い風景に向かってのどが潰れるほど叫んだ。

「誰もいないの??お元気ですか?!」

その時だった。遠くで何かがピカッと光った。白い雪に反射する太陽とは異なる閃光だった。雪原が私の呼びかけに応えていると感じた。2000年に留まっていたこの場所が、再び動き出そうとしている。

***

ピカッと光った場所に向かって吹雪をかき分けて走った。
歩く度に足が雪に埋もれたが私は気にしない。今は私を止められるものは何もない!冷たい空気が肺にいっぱい入ってくるのを感じた。長い間、凍っていた心臓が再び動き出す、生きている感覚。

閃光を頼りにたどりつくと正体不明の青い光の門があった。この門をくぐると何があるかは全く見当がつかないが、この先で誰かが私を呼んでいるということだけは確かだった。

(この先にいるかな? 私と同じ時代を生きる友達が…?)

一瞬で過ぎてしまった20年。私の感性、自分の歌をまともに披露できなかった私に再びチャンスが来たのだろうか。一度逃したチャンスを再び逃すわけにはいかない。

そうして、私は青い光に向かって歩いていった。




~ オルチャン少女の物語 ~

「ぉぼぇτる?
ゎたU達 カゞ一緒に歌っナ二 ぁの曲を?」

雪風が激しく吹き荒れる雪原。いつからかここに存在するものは全て凍ってしまった。生命体の痕跡すら見られなくなった孤独な地。
その時、遥か遠くから歌声が聞こえてきた。

なぜ言わなかったの
いや 言えなかったの

「…この歌は?」

少しも私のことを考えてくれなかったの

「このメロディー…この歌詞…」

記憶の片隅に追いやり完全に忘れていた歌が思い出された。

好きなんでしょ 愛してるんでしょ

「待って…ここからが私の好きなパートだわ…!」

歌の一小節に忘れていた多くの思い出がとめどなく溢れ出てきた。

こうして終わらせるなら
なぜあんなことを言ったの!

その時だった。ガシャンという音で私は目を覚ました。

「あなたを憎めばいいの
 それとも自分のせいにすればいいの~」

これ以上、聞くだけでは満足できなかった私は歌った。体が記憶するサビが始まると全ての感覚と感情がよみがえった。
しかし…こみ上げてきた感情を落ち着かせてみると、見えるもの全てが凍りついている。

「これは何?ここはどこ?」

周りには私以外誰もいなかった。みんなどこに行ったの…?

***

「ミリオレ歌謡祭に行く途中だったんだけど…、
 ここは何なの?」

一体何が起きたのかしら。
状況把握もしなきゃだけど、まずはたまっている書き込みを見るためにサイワールドを開いた。やっぱりたくさんの書き込みがある。みんなのページも見に行かないと。さぁ、まずは一番多くのコメントを残してくれた『本当のオルチャン美女』さんから。新しいスキンかな?可愛いな…アバターも私のタイプだ。ポイントがあれば買わないと。チャージ残ってるかな?

次は『君は僕だけのビタミン』さん。お、BGM変えてる。私のと同じだ。ムカつく…。他の人のページを閲覧するのに夢中になっていた時。たまっていたメッセージを確認し終わると、上段にある案内が目に入った。

[サイワールド!
 2022年4月2日サイデイ再オープン!]

2022年…? 今は2000年じゃなくて2022年ってこと?!

***

雪に覆われた雪原では全てのものが止まっている。
どうも、私はハイル。私は2000年から止まっている冷凍人間だ。どこから聞こえてきたのか分からない歌が私を起こしたけど、生きているのは私だけだと思う。いくら見回しても吹雪だけで、東西南北どの方向に歩いていっても同じ風景だ。

「本当にヤバい。私以外誰もいないの!?」

鳥の鳴き声さえも聞こえない場所。いくら叫んでも聞こえてくる返事はなく、自分の声だけが響き渡る。荒れ果てた雪原。世界が終わってしまったような気がすると、私が心の奥底で望んでいたものが浮かんだ。
青少年ベスト選抜大会に出ないといけなかったのに…。私が出たら絶対に歌で一番になれた…。準備できてなくても出ればよかった。こうして時間が経ってしまうと分かっていたら、やってたのに。

世の中に聞かせられなかった私の歌をそのまま葬るには残念で、思い切り歌ってみる。誰かは私の歌を聴いて喜んでくれるかもしれない…。

「聞いてるの?聞いてるなら、頷いて!」

普通こうして歌っていると、誰かがこっそり聞いている展開かもしれないと思い叫んでみる。しかし、静かな静寂は続き、もうこの歌を誰とも分かち合えないことがはっきりしてきた。もう終わりなの?サイトからダウンロードして繰り返し聴いていた数々の曲。もうこれを一緒に歌う人がいない?

その瞬間、私を目覚めさせた、あの歌を思い出した。急に聞こえてきたあの歌声の主人公は誰だったの!?つまりここには私以外にも誰かがいるってことでしょ?私は遠くの白い風景に向かってのどが潰れるほど叫んだ。

「誰もいないの??お元気ですか?!」

その時だった。遠くで何かがピカッと光った。白い雪に反射する太陽とは異なる閃光だった。雪原が私の呼びかけに応えていると感じた。2000年に留まっていたこの場所が、再び動き出そうとしている。

***

ピカッと光った場所に向かって吹雪をかき分けて走った。
歩く度に足が雪に埋もれたが私は気にしない。今は私を止められるものは何もない!冷たい空気が肺にいっぱい入ってくるのを感じた。長い間、凍っていた心臓が再び動き出す、生きている感覚。

閃光を頼りにたどりつくと正体不明の青い光の門があった。この門をくぐると何があるかは全く見当がつかないが、この先で誰かが私を呼んでいるということだけは確かだった。

(この先にいるかな?
 私と同じ時代を生きる友達が…?)

一瞬で過ぎてしまった20年。私の感性、自分の歌をまともに披露できなかった私に再びチャンスが来たのだろうか。一度逃したチャンスを再び逃すわけにはいかない。

そうして、私は青い光に向かって歩いていった。