ガオ
～ レッサーパンダ隊長の物語 ～
「レッサーパンダの仲間たち、待ってて、栗食パンを持ってくる！」
「あ～、よく寝た！」
澄み切った空気。私は、涼しい小屋で思い切り伸びをして起きた。森の中の一日は、毎日同じように見えるが、実は日々異なる。先週から少しずつ日が遅く昇り始めるのを見ると、レッサーパンダ村にも冬の準備をする時期が来たようね。
全てのレッサーパンダの健康と安全に責任を持つのは、隊長である私の役目。敏感に天気と空気の変化を感知できなければ、広い森の中で危険にさらされるのも一瞬なのよ。冬の備えといえば、何よりも食糧の準備が優先。私は外に出て、栗食パンの倉庫へ向かった。
「倉庫番、ドアを開けて！」
そう言うと、倉庫番はもじもじして固まった。
「ドアを開けて！なぜ開けてくれないの？」
「ヒュン…」
「何だって？はっきりしゃべって。」
「ヒュンヒュン…。」
「栗食パンの在庫がほとんどないって？まったく！」
怒りがこみ上げた私は理性を失うところだったが、すぐに落ち着きを取り戻す。栗食パンを1日に2個ずつ食べていた自分の姿が思い出されたからだ。その光景を見ていた周りのレッサーパンダたちは口々に言った。
「ヒュン…（隊長が全部食べたんだろ…）」
「…。」
しばらく静寂の瞬間。
「でも、私は体も大きいし可愛いでしょ！栗食パンを2個は食べてもいいのよ！」
もうすぐ冬が来るというのに栗食パンが不足しているなんて。レッサーパンダ村の危機に目の前が真っ白になった。しかし、レッサーパンダ村で一番大きい隊長らしく対策を用意した。
「今日から他の仕事は中断し、それぞれ森へ行って栗を取ってくること！分かった？
分かったらシッポを振って！」
そうして冬を越すためのレッサーパンダ村の生存作戦が始まった。
＊＊＊
慌ててレッサーパンダの仲間たちに栗を持ってくるように言ったが…、村で一番大きくて、可愛い私が一番多くの栗を集めないといけない。今日は、森の中の一番深い場所へ入った。久しぶりに訪れた場所、私は小さな声で口ずさんだ。
静かなこの場所で歌うと、全ての木々が私に集中するのが感じられる。木々も私の歌を聴いて幸せな気分になることを感じ、いつも歌いながら通る場所だ。
「木々よ、あと一曲。本当にあと一曲だけ歌ったら栗を探すわ！」
光り輝く葉と葉の合間に私の声が広がっていく。
木々だけでなく森の向こうの遠いところでも、誰かが私の歌声を聴いているかもしれない。
♩ ♪ ♫ ♬
歌に集中していると、初めて私の声に沿ってハーモニーを奏でる声が聞こえてきた。何の音だろう？森の中では誰にも会わなかったけど？！
栗をたくさん集めて喜んでいる他のレッサーパンダの鼻歌かしら？
だけど、明らかにレッサーパンダではない声だった。私は急に警戒し出した。森の中には、まだ私が把握しきれていない多くの生命体がいる。どんな存在がいつレッサーパンダの脅威になるか分からない。
私は、声の聞こえてくる方向へ歩いていった。声は、だんだんと近づいてきた。声が最も大きく聞こえる所にたどり着き、うっそうとした茂みをかき分けて、水たまりを渡ると…。
とてつもなく大きな栗の木が私を待っていた。
「巨大な栗の木だ…！これほどの大きさなら数日は思い切り食べられそう！」
私は、声の存在も忘れて必死で栗を集めた。喜ぶレッサーパンダの仲間たちの顔が頭に浮かんだ。その日以降、毎日栗の歌を歌うと、深い森の秘密のように、神秘的な声の返事と共に、私はより多くの栗を集めることができた。そうして、レッサーパンダ村の生存作戦は成功に終わると思われた。
＊＊＊
「今日もこんなにたくさん集めた。栗が２倍入った栗食パンを作らないと！」
嬉しい気持ちで鼻歌を歌いながら村へ向かう。普段よりも早く戻ってはきたが、誰も私を喜んで迎え入れる雰囲気ではなかった。
「なんでこんなに静かなの？隊長の私が来たのに…」
私は尋常ではない雰囲気を感じながら小屋に入ろうとした時、ささやく声が聞こえた。
「ヒュン…（やっぱり隊長に言った方がいいかな？）」
「ヒュンヒュン…（今も無理している。ひとまず我々が食べる量を減らしてみよう。）」
ぼんやりと感じてはいた。私がいくらたくさん集めてきたとしても、これから来る長い長い冬を越すには厳しいということを。
いつからか森の中に栗が減ってきたのは事実だ。私も少しずつ気づいてはいたが、その日がこんなに早く来るとは…。このままでは、森の中の仲間たちが冬の間、飢えてしまう。方法を探さないと。
私は、再び森へ足を運んだ。森は常に答えを知っていると言った。静けさの中で目を閉じて、森の話を待とうとした瞬間…。
♩ ♪ ♫ ♬
青い光が降り注ぎ、私を栗の木へと導いた少女の歌声が聞こえた。私が歌い始める前に、先に歌が聞こえてきたのは初めてだった。
「あれは何だろう…？」
明るい光の奥から聞こえてくる少女の歌声が次第にはっきりとしてきた。少女の声は温かく、この声についていけば、何の心配もなくなるような気がした。
そうだ。もう森には栗はない。そこを越えて、栗を大量に集めて栗食パン工場を建てるんだ！木々の話を信じてみよう！私は栗食パン工場のある森を想像しながら光に向かって走り始めた。再び戻ってくる頃には森の仲間たちが心配なく冬を越せると信じて。
レッサーパンダの仲間たち、待ってて、栗食パンを持ってくる！
でも…ほどほどに食べなさい！
～ レッサーパンダ隊長の物語 ～
「レッサーパンダの仲間たち、待ってて、
栗食パンを持ってくる！」
「あ～、よく寝た！」
澄み切った空気。私は、涼しい小屋で思い切り伸びをして起きた。森の中の一日は、毎日同じように見えるが、実は日々異なる。先週から少しずつ日が遅く昇り始めるのを見ると、レッサーパンダ村にも冬の準備をする時期が来たようね。
全てのレッサーパンダの健康と安全に責任を持つのは、隊長である私の役目。敏感に天気と空気の変化を感知できなければ、広い森の中で危険にさらされるのも一瞬なのよ。冬の備えといえば、何よりも食糧の準備が優先。私は外に出て、栗食パンの倉庫へ向かった。
「倉庫番、ドアを開けて！」
そう言うと、倉庫番はもじもじして固まった。
「ドアを開けて！なぜ開けてくれないの？」
「ヒュン…」
「何だって？はっきりしゃべって。」
「ヒュンヒュン…。」
「栗食パンの在庫がほとんどないって？
まったく！」
怒りがこみ上げた私は理性を失うところだったが、すぐに落ち着きを取り戻す。栗食パンを1日に2個ずつ食べていた自分の姿が思い出されたからだ。その光景を見ていた周りのレッサーパンダたちは口々に言った。
「ヒュン…（隊長が全部食べたんだろ…）」
「…。」
しばらく静寂の瞬間。
「でも、私は体も大きいし可愛いでしょ！
栗食パンを2個は食べてもいいのよ！」
もうすぐ冬が来るというのに栗食パンが不足しているなんて。レッサーパンダ村の危機に目の前が真っ白になった。しかし、レッサーパンダ村で一番大きい隊長らしく対策を用意した。
「今日から他の仕事は中断し、それぞれ森へ行って
栗を取ってくること！
分かった？分かったらシッポを振って！」
そうして冬を越すためのレッサーパンダ村の生存作戦が始まった。
＊＊＊
慌ててレッサーパンダの仲間たちに栗を持ってくるように言ったが…、村で一番大きくて、可愛い私が一番多くの栗を集めないといけない。今日は、森の中の一番深い場所へ入った。久しぶりに訪れた場所、私は小さな声で口ずさんだ。
静かなこの場所で歌うと、全ての木々が私に集中するのが感じられる。木々も私の歌を聴いて幸せな気分になることを感じ、いつも歌いながら通る場所だ。
「木々よ、あと一曲。本当にあと一曲だけ歌ったら
栗を探すわ！」
光り輝く葉と葉の合間に私の声が広がっていく。
木々だけでなく森の向こうの遠いところでも、誰かが私の歌声を聴いているかもしれない。
♩ ♪ ♫ ♬
歌に集中していると、初めて私の声に沿ってハーモニーを奏でる声が聞こえてきた。何の音だろう？森の中では誰にも会わなかったけど？！
栗をたくさん集めて喜んでいる他のレッサーパンダの鼻歌かしら？
だけど、明らかにレッサーパンダではない声だった。私は急に警戒し出した。森の中には、まだ私が把握しきれていない多くの生命体がいる。どんな存在がいつレッサーパンダの脅威になるか分からない。
私は、声の聞こえてくる方向へ歩いていった。声は、だんだんと近づいてきた。声が最も大きく聞こえる所にたどり着き、うっそうとした茂みをかき分けて、水たまりを渡ると…。
とてつもなく大きな栗の木が私を待っていた。
「巨大な栗の木だ…！これほどの大きさなら
数日は思い切り食べられそう！」
私は、声の存在も忘れて必死で栗を集めた。喜ぶレッサーパンダの仲間たちの顔が頭に浮かんだ。その日以降、毎日栗の歌を歌うと、深い森の秘密のように、神秘的な声の返事と共に、私はより多くの栗を集めることができた。そうして、レッサーパンダ村の生存作戦は成功に終わると思われた。
＊＊＊
「今日もこんなにたくさん集めた。
栗が２倍入った栗食パンを作らないと！」
嬉しい気持ちで鼻歌を歌いながら村へ向かう。普段よりも早く戻ってはきたが、誰も私を喜んで迎え入れる雰囲気ではなかった。
「なんでこんなに静かなの？
隊長の私が来たのに…」
私は尋常ではない雰囲気を感じながら小屋に入ろうとした時、ささやく声が聞こえた。
「ヒュン…(やっぱり隊長に言った方がいいかな？)」
「ヒュンヒュン…(今も無理している。ひとまず
我々が食べる量を減らしてみよう。)」
ぼんやりと感じてはいた。私がいくらたくさん集めてきたとしても、これから来る長い長い冬を越すには厳しいということを。
いつからか森の中に栗が減ってきたのは事実だ。私も少しずつ気づいてはいたが、その日がこんなに早く来るとは…。このままでは、森の中の仲間たちが冬の間、飢えてしまう。方法を探さないと。
私は、再び森へ足を運んだ。森は常に答えを知っていると言った。静けさの中で目を閉じて、森の話を待とうとした瞬間…。
♩ ♪ ♫ ♬
青い光が降り注ぎ、私を栗の木へと導いた少女の歌声が聞こえた。私が歌い始める前に、先に歌が聞こえてきたのは初めてだった。
「あれは何だろう…？」
明るい光の奥から聞こえてくる少女の歌声が次第にはっきりとしてきた。少女の声は温かく、この声についていけば、何の心配もなくなるような気がした。
そうだ。もう森には栗はない。そこを越えて、栗を大量に集めて栗食パン工場を建てるんだ！木々の話を信じてみよう！私は栗食パン工場のある森を想像しながら光に向かって走り始めた。再び戻ってくる頃には森の仲間たちが心配なく冬を越せると信じて。
レッサーパンダの仲間たち、待ってて、栗食パンを持ってくる！
でも…ほどほどに食べなさい！
