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カカオ姫チャチャタソっコンジュ

~ カカオ王国の姫の物語 ~

「私、欲しいものができた」

チュンチュン チュンチュン

やっぱり朝の宮中の庭園は本当に素敵。バラのつるにできた露の玉、少し冷たい空気と照りつける朝日、私に朝のあいさつをしに来た小動物たち…

「あなたは初めて見る顔だけど…あなたも私をお祝いしに来たのかしら?」

真っ青な翼を誇る蝶が私の肩にとまった。あら、こんなに可愛いとすぐに行ってしまうのは申し訳なくなるわ。蝶々さん、あなたも気持ちよく吹く風の音が聞こえる?

「お姫様、このままではパーティーの準備に遅れますよ!」

あ、庭園にいると時間が経つのを忘れてしまう。

新しいお友達とティータイムを楽しみたかったけど、そうしていたら、ばあやが困ってしまうから大人しくパーティーの準備のため立ち上がった。なぜなら、今日は私、カカオ姫の誕生日だからだ。

***

「じゃーん!お姫様、準備が終わりましたよ。なんて可愛らしいんでしょう?」

鏡の中の私は、銀色の髪に青いサテンのリボンを結び、黒いフリルのついたネイビーのドレスを着ていた。

「カカオの実からお姫様が生まれたのは、つい最近のことのようなのに…」

ばあやの目頭が赤くなった。私は、慌てて話題を変えた。

「ところで、ばあや!もうすぐ私の誕生日でしょ。今年のプレゼントは、何をくれるのかしら?
   ばあやが作ったカカオ100%ケーキ?絹の髪飾り?」

「…お姫様が望むものなら何でも、おっしゃってください!」

すぐに明るい表情になり、羽ペンを取り出しメモする準備をするばあやだった。しかし、正直、欲しいプレゼントは特になかった。欲しいものは既に全部持っていたから。

***

「カカオ姫様へ、永遠の甘さを!」

私の誕生日のために特別講演を見せてくれた3人の美少年が、私にお祝いのあいさつをした。
パーティー会場は、彼らが作り出した熱気と群衆の歓声で埋め尽くされていた。流麗なダンスとさわやかな笑顔、美声…、その3人が息を合わせて披露した舞台は、姫である私でも今まで見たことのない光景だった。
彼らが袖口をひらめきながら腕を伸ばせば、観衆たちの視線はそこに向かい、彼らが柔らかい美声で歌えば、貴族たちの顔が赤くなった。舞台を眺める観衆の目は宝石のようにひっきりなしに輝いた。

さっき言った言葉、取り消すわ。こんな気分は初めてよ。欲しいものができた。ついに、まぶしいくらい輝くものを見つけたの!

***

華やかな一日が過ぎ、夜が訪れた私の寝室。寝る前にばあやが髪をとかしてくれている時だった。

「ばあや、聞いて。私、誕生日に欲しいものができたの。」
「おっしゃってください。お姫様。私が王国中を探し回ってでもお持ちします!」

ばあやは優しい手つきで髪をとかしながら言った。

「私、【愛(サラン)】が欲しいわ。」
「人(サラム)ですか?あ、あの3人組!すぐに王室の専属歌手にしましょうか?」

ばあやが目を輝かせて言った。

「いいえ、人じゃなくて【愛】よ!あ!い!」
「愛?」

ばあやはしばらく戸惑ったのち、大笑いした。

「お姫様、愛だなんて!そんなにあの3人が気に入りましたか?もちろんカカオ姫様なら十分に
   3人の男性から同時に愛されることもできるでしょう。ただ異性間の愛というものは…」

すかさず私は叫んだ。

「そうではなくて、私はあの3人組が受けていた愛が欲しいの!」

ばあやは全く理解できないという表情だった。

「一国の姫であるカカオ姫様のほうが、ずっと大衆の関心や人気を集めていますよ。」

違う。あれは単純な関心と人気ではなかった。彼らがまぶしいくらい輝いていた理由は、明らかに【愛】があったからだ。とても特別な愛。

「私も舞台で歌って踊ったら…あんな風に愛されるかしら?私は物真似も得意よ。
   あの3人組と同じように演技することもできる。」

私の言葉を聞いて、ばあやは腰を抜かした。王室では絶対に許されないと。それでも私は、あんな風に愛されたいの!

***

ベッドに横になって私はまたあの舞台を思い出していた。あの3人はどんな気分だっただろう?みんなが舞台の上の自分を愛してくれる気分はどんなだろうか?私は長いこと寝返りを打っても眠れにつけず、こっそりと宮中の庭園に出た。
月明りの下、昼間見たあの青い蝶が舞っていた。

「あなたも眠れないのね?」

青い蝶は、ひらひらと私をどこかへと導いた。いつの間にか私は庭園の噴水の前に立っていた。水の出ていない噴水は鏡のように透明に私の姿を映した。
急に3人組のように歌って踊りたい衝動に駆られた。私を見る大勢の観客がいると想像して、見よう見まねで3人組の真似をしていると、急に噴水の水面が青く光り揺れ動き始めた。
これは…昔童話で読んだ、望みの門だということは本能的に分かった。なりたい姿を想像するとその姿にしてくれるという…

願いを言ってごらん
あなたの心の中にある小さな夢を言ってごらん
あなたの頭の中にある理想の姿を描いてごらん
それから私を見て
私は あなたのジーニーよ 夢よ ジーニーよ 

渦巻く水の中から甘い少女の歌声が聞こえてきた。
歌詞が、まるで今の私のための歌のようだった。私も私だけのための愛は欲しい。この中でなら、私も歌って踊れるのに。長く悩みはしなかった。ばあや、ごめんね。私は愛さえ手に入れたらすぐに戻ってくる!
私は青い光が揺れ動く噴水のなかに飛び込んだ。息苦しく肺の中に水が押し寄せる感じがして、気が遠くなった。

それから、私はぼんやりとして気を失った。

※少女時代「Genie」の一部




~ カカオ王国の姫の物語 ~

「私、欲しいものができた」

チュンチュン チュンチュン

やっぱり朝の宮中の庭園は本当に素敵。バラのつるにできた露の玉、少し冷たい空気と照りつける朝日、私に朝のあいさつをしに来た小動物たち…

「あなたは初めて見る顔だけど…
 あなたも私をお祝いしに来たのかしら?」

真っ青な翼を誇る蝶が私の肩にとまった。あら、こんなに可愛いとすぐに行ってしまうのは申し訳なくなるわ。蝶々さん、あなたも気持ちよく吹く風の音が聞こえる?

「お姫様、このままではパーティーの準備に
 遅れますよ!」

あ、庭園にいると時間が経つのを忘れてしまう。

新しいお友達とティータイムを楽しみたかったけど、そうしていたら、ばあやが困ってしまうから大人しくパーティーの準備のため立ち上がった。なぜなら、今日は私、カカオ姫の誕生日だからだ。

***

「じゃーん!お姫様、準備が終わりましたよ。
 なんて可愛らしいんでしょう?」

鏡の中の私は、銀色の髪に青いサテンのリボンを結び、黒いフリルのついたネイビーのドレスを着ていた。

「カカオの実からお姫様が生まれたのは、
 つい最近のことのようなのに…」

ばあやの目頭が赤くなった。私は、慌てて話題を変えた。

「ところで、ばあや!もうすぐ私の誕生日でしょ。
 今年のプレゼントは、何をくれるのかしら?
 ばあやが作ったカカオ100%ケーキ?
 絹の髪飾り?」
「…お姫様が望むものなら何でも、おっしゃって
 ください!」

すぐに明るい表情になり、羽ペンを取り出しメモする準備をするばあやだった。しかし、正直、欲しいプレゼントは特になかった。欲しいものは既に全部持っていたから。

***

「カカオ姫様へ、永遠の甘さを!」

私の誕生日のために特別講演を見せてくれた3人の美少年が、私にお祝いのあいさつをした。
パーティー会場は、彼らが作り出した熱気と群衆の歓声で埋め尽くされていた。流麗なダンスとさわやかな笑顔、美声…、その3人が息を合わせて披露した舞台は、姫である私でも今まで見たことのない光景だった。
彼らが袖口をひらめきながら腕を伸ばせば、観衆たちの視線はそこに向かい、彼らが柔らかい美声で歌えば、貴族たちの顔が赤くなった。舞台を眺める観衆の目は宝石のようにひっきりなしに輝いた。

さっき言った言葉、取り消すわ。こんな気分は初めてよ。欲しいものができた。ついに、まぶしいくらい輝くものを見つけたの!

***

華やかな一日が過ぎ、夜が訪れた私の寝室。寝る前にばあやが髪をとかしてくれている時だった。

「ばあや、聞いて。
 私、誕生日に欲しいものができたの。」
「おっしゃってください。お姫様。
 私が王国中を探し回ってでもお持ちします!」

ばあやは優しい手つきで髪をとかしながら言った。

「私、【愛(サラン)】が欲しいわ。」
「人(サラム)ですか?あ、あの3人組!
 すぐに王室の専属歌手にしましょうか?」

ばあやが目を輝かせて言った。

「いいえ、人じゃなくて【愛】よ!あ!い!」
「愛?」

ばあやはしばらく戸惑ったのち、大笑いした。

「お姫様、愛だなんて!そんなにあの3人が気に
 入りましたか?もちろんカカオ姫様なら十分に
 3人の男性から同時に愛されることもできる
 でしょう。ただ異性間の愛というものは…」

すかさず私は叫んだ。

「そうではなくて、私はあの3人組が受けていた
 愛が欲しいの!」

ばあやは全く理解できないという表情だった。

「一国の姫であるカカオ姫様のほうが、ずっと
 大衆の関心や人気を集めていますよ。」

違う。あれは単純な関心と人気ではなかった。彼らがまぶしいくらい輝いていた理由は、明らかに【愛】があったからだ。とても特別な愛。

「私も舞台で歌って踊ったら…あんな風に愛される
 かしら?私は物真似も得意よ。
 あの3人組と同じように演技することもできる。」

私の言葉を聞いて、ばあやは腰を抜かした。王室では絶対に許されないと。それでも私は、あんな風に愛されたいの!

***

ベッドに横になって私はまたあの舞台を思い出していた。あの3人はどんな気分だっただろう?みんなが舞台の上の自分を愛してくれる気分はどんなだろうか?私は長いこと寝返りを打っても眠れにつけず、こっそりと宮中の庭園に出た。
月明りの下、昼間見たあの青い蝶が舞っていた。

「あなたも眠れないのね?」

青い蝶は、ひらひらと私をどこかへと導いた。いつの間にか私は庭園の噴水の前に立っていた。水の出ていない噴水は鏡のように透明に私の姿を映した。
急に3人組のように歌って踊りたい衝動に駆られた。私を見る大勢の観客がいると想像して、見よう見まねで3人組の真似をしていると、急に噴水の水面が青く光り揺れ動き始めた。
これは…昔童話で読んだ、望みの門だということは本能的に分かった。なりたい姿を想像するとその姿にしてくれるという…

願いを言ってごらん
あなたの心の中にある
小さな夢を言ってごらん
あなたの頭の中にある
理想の姿を描いてごらん
それから私を見て
私は あなたのジーニーよ
夢よ ジーニーよ 

渦巻く水の中から甘い少女の歌声が聞こえてきた。
歌詞が、まるで今の私のための歌のようだった。私も私だけのための愛は欲しい。この中でなら、私も歌って踊れるのに。長く悩みはしなかった。ばあや、ごめんね。私は愛さえ手に入れたらすぐに戻ってくる!
私は青い光が揺れ動く噴水のなかに飛び込んだ。息苦しく肺の中に水が押し寄せる感じがして、気が遠くなった。

それから、私はぼんやりとして気を失った。

※少女時代「Genie」の一部