ルビー
~ ツノの生えたルドルフの話 ~
「あなたみたいに歌が上手な子が
からかわれることなく、称賛する世界があるんだよ」
夢にまで見たホワイトクリスマス
今年もやってきた
メリークリスマス、楽しいな
幸あれ、きよしこの夜
今歌った歌は、緑の箱に包むのがいい。緑色のワンピースが好きな少女に贈るプレゼントだから。真っ赤なお鼻のルドルフが好きとも書いてあったから、ルドルフが首につけている鈴の音も一緒にプレゼントしたら、きっと喜ぶよね?
私は、はやる気持ちで711曲目を箱の中に入れ、丁寧に包装した。緑の箱によく似合う赤のリボンも忘れなかった。
「次の子の手紙は…」
サンタさん、みんながね、私の羽は大きすぎるって、いつもからかうの。
みんなにからかわれる度に悲しくなるよ。だけど、サンタさんが泣いている子にはプレゼントをあげないって言っていたから、泣かなかったよ。
泣かなかったから、今年のクリスマスにはプレゼントをちょうだい
この子の手紙に、私は心が痛くなった。私は頭に生えたツノを触り、ため息をついた。
「友達にからかわれるのは、本当につらいことよね。ありのままの自分を、好きになって
もらえないと分かることは…」
目頭が熱くなったが、子どもたちへのプレゼントに涙を入れるわけにはいかない。この子だって泣かないよう頑張っているのに、ルドルフの私が涙を見せるわけにはいかない。私は軽く喉を鳴らし、歌い始めた。この子には、励ましの歌を届けてあげたい。
霧がかったクリスマスの日 サンタさんが言った
明るいルドルフのためにソリを引いておくれ
以来 鹿たちは彼をとても愛した
ルドルフ鹿の鼻をずっとずっと覚えていて
ここはサンタの街。頭にツノをくっつけて生まれてきたルドルフのルビーが、君を応援していることを伝えるためさ。私は、美しい歌と温かいキスを、可愛い箱に丁寧に詰め込んだ。
***
サンタの街は、子どもたちへのプレゼントの準備で大忙し。妖精たちは慌ただしくプレゼントを作り、サンタさんは子どもたちからのリクエストを確認していた。そんな瞬きする暇もないほど忙しい状況でも…。
「おや、ツノの生えた少女ルビーじゃん。おい、ルビー!今年のクリスマスは、お前が赤い鼻を
つけて夜空を走るんだって?!」
近くを通りがかっただけで、みんなは私をからかった。私はうつむいたまま、足早にその場を離れた。
「サンタさんがプレゼントをあげないのは、泣いている子だけじゃないんだ。
他の友達をいじめる子にも、プレゼントをあげないんだよ…」
私はとうとう泣いてしまった。サンタの街で生まれ、これまでルドルフとして生きてきて、一度も泣かずに過ごせた年はない。ある日は、何か月も家に閉じこもったまま、ひとりで泣いていたこともあった。
今日も私を慰めてくれたのは、ツノに積もった真っ白な雪だけ。どうやら今年のクリスマスも、泣き虫な私にプレゼントはなさそうだ。
***
クリスマスが近づいてきた。ここ数日は、子どもたちへのプレゼントの準備で、瞬きする暇もないほど忙しい。
そして、クリスマスイブの夜。子どもたちだけでなく、サンタの街のあらゆる子供達が、枕元に靴下を置いた。靴下の大きさが、期待感を物語っているようだった。枕元の靴下が大きいほど、今年いい子にしていたことを自ら示すわけだから。
私は今年も泣いてばかりいたから、靴下を置いておくことができなかった。きっとサンタさんは、今年も私にプレゼントをくれないはず。私は残念な気持ちをどうにか抑え、ベッドに入った。わあっと涙が溢れてしまう前に、ぎゅっと目をつぶった。
「クリスマスの日くらいは泣かない」
そう自分に言い聞かせた。
ところが、どういうことだろうか。朝起きたら、私の枕元に赤い箱のプレゼントが!私は信じられなくて、思わず目をこすった。サンタの街で、これまで315個のプレゼントを包んだけど、私のためのものは1つもなかった。
「夢じゃないわ、本物のプレゼントだ!」
私にも、ついにプレゼントが!これは、何事かと戸惑った。私はプレゼントを大事に手に取る。私は心あたたまるプレゼントに頬をあててみたり、そっと揺らしてみたりした。初めてのプレゼントを簡単には開けることができず、戸惑っていたらー
明るいルドルフのためにソリを引いておくれ
以来 鹿たちは彼をとても愛した
ルドルフの鹿の鼻をずっとずっと覚えていて
箱の中から聞き覚えのある歌が聴こえてきた。最初は自分の声かと思ったけど、よく聴くと、自分の声ではなかった。
そして、その時、箱の中から優しい声がしてきた。
『やあ、ルビー!はじめまして!』
箱が話せるはずないし。まさか、箱の中に誰かがいる?私は耳をすませた。
「…あなたは誰!?」
『私は別の世界で、あなたのように歌を歌っているわ。あなたがお友達に美しい歌を贈っている
ように、私もあなたにプレゼントをしたくて!』
「美しい」だなんて。初めてかけられた優しい言葉に、私の心はとろけそうになっていた。
『あなたのように歌が上手な子をからかわれることなく称賛する世界があるんだよ。
その世界に行ってみない?』
プレゼントの箱の中の少女は、私に心惹かれる提案をした。
本当に?私みたいな子にも拍手がおくられる世界があるの?そんな場所があるなら、迷うことなく今すぐにでも…。
私が箱を開けると、箱の中から青い光が溢れてきた。しばらく不思議そうに見ていたが、光が溢れ出す箱の中に手を入れた。想定外に指先にぬくもりを感じ、私はすぐに理解した。
「ここはきっと私がからかわれない世界だわ」
『そうさ!早くおいで、ルビー。みんなが待ってるよ。』
少女の声に押されて、私は全身を光に預けた。冷えた体を温めてくれるぬくもりに包まれ、自然と笑みがこぼれた
~ ツノの生えたルドルフの話 ~
「あなたみたいに歌が上手な子が
からかわれることなく、
称賛する世界があるんだよ」
夢にまで見たホワイトクリスマス
今年もやってきた
メリークリスマス、楽しいな
幸あれ、きよしこの夜
今歌った歌は、緑の箱に包むのがいい。緑色のワンピースが好きな少女に贈るプレゼントだから。真っ赤なお鼻のルドルフが好きとも書いてあったから、ルドルフが首につけている鈴の音も一緒にプレゼントしたら、きっと喜ぶよね?
私は、はやる気持ちで711曲目を箱の中に入れ、丁寧に包装した。緑の箱によく似合う赤のリボンも忘れなかった。
「次の子の手紙は…」
サンタさん、
みんながね、私の羽は大きすぎるって、
いつもからかうの。みんなにからかわれる
度に悲しくなるよ。だけど、サンタさんが
泣いている子にはプレゼントをあげないって
言っていたから、泣かなかったよ。
泣かなかったから、今年のクリスマスには
プレゼントをちょうだい
この子の手紙に、私は心が痛くなった。私は頭に生えたツノを触り、ため息をついた。
「友達にからかわれるのは、本当につらい
ことよね。ありのままの自分を、好きに
なってもらえないと分かることは…」
目頭が熱くなったが、子どもたちへのプレゼントに涙を入れるわけにはいかない。この子だって泣かないよう頑張っているのに、ルドルフの私が涙を見せるわけにはいかない。私は軽く喉を鳴らし、歌い始めた。この子には、励ましの歌を届けてあげたい。
霧がかったクリスマスの日
サンタさんが言った
明るいルドルフのためにソリを
引いておくれ
以来 鹿たちは彼をとても愛した
ルドルフ鹿の鼻をずっとずっと覚えていて
ここはサンタの街。頭にツノをくっつけて生まれてきたルドルフのルビーが、君を応援していることを伝えるためさ。私は、美しい歌と温かいキスを、可愛い箱に丁寧に詰め込んだ。
***
サンタの街は、子どもたちへのプレゼントの準備で大忙し。妖精たちは慌ただしくプレゼントを作り、サンタさんは子どもたちからのリクエストを確認していた。そんな瞬きする暇もないほど忙しい状況でも…。
「おや、ツノの生えた少女ルビーじゃん。
おい、ルビー!今年のクリスマスは、お前が
赤い鼻をつけて夜空を走るんだって?!」
近くを通りがかっただけで、みんなは私をからかった。私はうつむいたまま、足早にその場を離れた。
「サンタさんがプレゼントをあげないのは、泣いて
いる子だけじゃないんだ。他の友達をいじめる子
にも、プレゼントをあげないんだよ…」
私はとうとう泣いてしまった。サンタの街で生まれ、これまでルドルフとして生きてきて、一度も泣かずに過ごせた年はない。ある日は、何か月も家に閉じこもったまま、ひとりで泣いていたこともあった。
今日も私を慰めてくれたのは、ツノに積もった真っ白な雪だけ。どうやら今年のクリスマスも、泣き虫な私にプレゼントはなさそうだ。
***
クリスマスが近づいてきた。ここ数日は、子どもたちへのプレゼントの準備で、瞬きする暇もないほど忙しい。
そして、クリスマスイブの夜。子どもたちだけでなく、サンタの街のあらゆる子供達が、枕元に靴下を置いた。靴下の大きさが、期待感を物語っているようだった。枕元の靴下が大きいほど、今年いい子にしていたことを自ら示すわけだから。
私は今年も泣いてばかりいたから、靴下を置いておくことができなかった。きっとサンタさんは、今年も私にプレゼントをくれないはず。私は残念な気持ちをどうにか抑え、ベッドに入った。わあっと涙が溢れてしまう前に、ぎゅっと目をつぶった。
「クリスマスの日くらいは泣かない」
そう自分に言い聞かせた。
ところが、どういうことだろうか。朝起きたら、私の枕元に赤い箱のプレゼントが!私は信じられなくて、思わず目をこすった。サンタの街で、これまで315個のプレゼントを包んだけど、私のためのものは1つもなかった。
「夢じゃないわ、本物のプレゼントだ!」
私にも、ついにプレゼントが!これは、何事かと戸惑った。私はプレゼントを大事に手に取る。私は心あたたまるプレゼントに頬をあててみたり、そっと揺らしてみたりした。初めてのプレゼントを簡単には開けることができず、戸惑っていたらー
明るいルドルフのために
ソリを引いておくれ
以来 鹿たちは彼をとても愛した
ルドルフの鹿の鼻をずっとずっと覚えていて
箱の中から聞き覚えのある歌が聴こえてきた。最初は自分の声かと思ったけど、よく聴くと、自分の声ではなかった。
そして、その時、箱の中から優しい声がしてきた。
『やあ、ルビー!はじめまして!』
箱が話せるはずないし。まさか、箱の中に誰かがいる?私は耳をすませた。
「…あなたは誰!?」
『私は別の世界で、あなたのように歌を歌って
いるわ。あなたがお友達に美しい歌を贈っている
ように、私もあなたにプレゼントをしたくて!』
「美しい」だなんて。初めてかけられた優しい言葉に、私の心はとろけそうになっていた。
『あなたのように歌が上手な子を
からかわれることなく称賛する世界があるんだよ。
その世界に行ってみない?』
プレゼントの箱の中の少女は、私に心惹かれる提案をした。
本当に?私みたいな子にも拍手がおくられる世界があるの?そんな場所があるなら、迷うことなく今すぐにでも…。
私が箱を開けると、箱の中から青い光が溢れてきた。しばらく不思議そうに見ていたが、光が溢れ出す箱の中に手を入れた。想定外に指先にぬくもりを感じ、私はすぐに理解した。
「ここはきっと私がからかわれない世界だわ」
『そうさ!早くおいで、ルビー。
みんなが待ってるよ。』
少女の声に押されて、私は全身を光に預けた。冷えた体を温めてくれるぬくもりに包まれ、自然と笑みがこぼれた